『なぜメディアは沈黙したのか 報道から読み解くジャニー喜多川事件』感想

今では完全に風化している感じがするが
2023年にはジャニー喜多川の長期間にわたる性加害が問題視された

そこで疑問だったのは
現在では不倫とかですぐ騒いでいる日本のメディアは
「日本のメディアは今までジャニー喜多川の性加害をなぜ報道しなかったのか?」
という疑問がどうしても拭えなかったため

この疑問を解消するために
『メディアはなぜ沈黙したのか 報道から読み解くジャニー喜多川事件(藤木TDC著)』を読んだ

本書は過去の報道からジャニーズ問題を読み解いている
とはいっても芸能界報道なので
どうしても週刊誌が多くなる

本書を読むとフォーリーブス、郷ひろみ、たのきんトリオ、SMAPなど
ジャニーズアイドルの歴史に紐づけて書いている

私自身、ジャニーズのことにかなり疎いので
郷ひろみが最初ジャニーズアイドルだったことと
SMAPはジャニーズとしては異端のアイドルだったことについては
本書を読んでて驚いた

ジャニーズの問題は
性加害だけではなく

タレントの労働搾取(低い収入、過酷な労働をさせる)
タレントの使い捨て
離反したタレントに対しての報復(俗に言う「干す」ということ)
という芸能界の問題がジャニーズに凝縮されているように感じた

ジャニーズ問題のターニングポイントは
1980年代の暴露本ブーム
2000年代の文春裁判の二つだと思われる

暴露本ブームというのは芸能界の闇を暴露した本で
その中にジャニー喜多川の性加害について書いた
元フォーリーブスの北公次が書いた「光GENJIへ」が出版された
(この本の出版経緯自体もゴーストライターが書いたとか、村上とおるの私怨とかいろいろあるらしいみたいだが)

そして、「ジャニーズおっかけマップ」など
タレントのプライベートについて踏み込む本を出したこともあって
ジャニーズ事務所に裁判をかけられて
同種の本は出版できなくなった

それから2000年代には
週刊文春はジャニー喜多川の性加害を報道したことで
名誉毀損で訴えられたことで裁判となり
結果として『ジャニー喜多川の性加害』が公的に認められた

しかし、文春裁判から約20年間
2023年にBBCが取り上げるまで
日本のメディアは完全に沈黙したばかりかジャニーズを称賛し、美化した

なぜ、こうなったのか

まず、週刊文春がいかに売れていたとしても
テレビメディアが強いので影響力は限定的だった
本書ではメディア(特にテレビ)がジャニーズアイドルがもたらすカネを捨てて
ジャニーズと敵対する覚悟がなかった

そして、大衆は
テレビで普通にジャニーズタレントがでているのだから
「真剣にジャニー喜多川の性加害について考えなかった」
だから、みんな問題視しなかった

では、これから「真剣」になるかというと
それも絶望的だ
2023年は騒がれたが記者のNGリスト騒動あたりから
もう話題にすらならなくなった
被害者のなかで中傷のために自殺したひともでているのに
そして、「ジャニーズ」という名前がなくなっても問題は放置される
「真剣」になるのだったら、過去のメディア自身がどうしても「愚かさ」を直視しなければならないからだ

話は変わるが芸人のスマイリーキクチ氏が自身がデマで誹謗中傷ことで
「芸能界は凶悪事件を起こした人がテレビに出られるような甘い世界ではない」
と『突然、僕は殺人犯にされた』という本で書いていたが
たぶん、大半の人はこういう認識でテレビを見ていたのだろうと思う。
しかし、ジャニーズは例外だった

本書の終わりには
「ジャニーズというのは、「未成熟」な戦後日本の象徴」
という結論で終わっている
本当に日本が豊かになったのなら
ジャニーズに忖度する必要はなかった

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