『ネットと愛国』 感想

2012年に出版され、2015年に文庫化された書籍
在特会(在日特権を許さない市民の会)のルポルタージュ

在特会は2000年代に桜井誠氏に作られた団体
それを取材し、在特会メンバーにインタビューをした内容が書いている

在特会は2000年代の
日韓ワールドカップ、そして北朝鮮の拉致問題に動揺した日本社会の情念の受け皿になっていたように思う
彼らのいう「在日特権」というものは「言いがかり」であり、断じて特権なんてない

そして、「朝鮮学校の生徒は北朝鮮のスパイ」などという
短絡的で根拠不明な情報によって行動を起こしている
本書では在特会メンバーは本気で在日特権というものを信じているらしい

会長の桜井誠本人は
在日特権はデタラメだということを認識していたのかもしれないが
彼らは「自分に都合のいいデマ」を黙認
もっと言えば、利用することによって組織を拡大していた側面は否めない

・在特会を大きくした「大人」は、在特会の暴走により離反する

本書ではチャンネル桜など
保守系の人間が桜井誠、そして在特会を育て上げた

しかし、保守系の人間は「在日特権」など妄想みたいなものだ
ということをわかっていたのではないか?
それを自分たちに都合がいいからといって利用し
手が付けられなくなれば用済みとして離反する

本書のなかで感じたのは
在特会メンバーを影で支える「普通の日本人」がいる
彼らはカンパや動画を拡散したりすることなどで
在特会を支えてきた。

2000年代は「在日特権」なのかもしれないが
暇アノンやクルド人ヘイトなど
同じような構造が別のトピックで繰り返されているのではないかと感じる

・在特会には「うまくいっていない人」が集まる

在特会メンバーのインタビューを読んでみると
基本的に普通の人が多いように感じる

意外だったのは在特会には外国にルーツがある人もいるということだ
彼らは「日本人」と認められるために在特会の活動をしているらしい

ネトウヨはニートや引きこもりが多いというイメージがあるが
実はそうでもないが
基本的に「うまくいってない人」が在特会に集まるという

「うまくいってない人」というのは希望が持てない
「明日が今日よりよくなる」と信じられない人らしい
2000年代に「成熟社会」とか「下り坂をそろそろおりる」などのスローガンがあったが
これらは実は失敗したのではないかと感じる
希望がない社会ではうまくいっていない理由を探し
それがデタラメなものでも飛びつく人が多い
為政者はそれを利用しようとするが
コントロールできなくなると権力に向かってくる可能性もある

本書では自分がうまくいっていないときに
「敵」が必要でそれがたまたま「在日特権」になっているように思う

なんとなく「守られている」というイメージがあるものが狙われるようになると思う

・外国人
・セクシャルマイノリティ
・労働組合
・公務員
などなど

最近ではそれにNPOや女性などもはいってくるのかもしれない

既存のリベラル側が彼らを無視してきたため
リベラルに絶望した人々がデマの情報に飛びつき
それらは基本的な極右思想なために

・2015年の「文庫本あとがき」では被害者の共感が強くなっている

個人的に文庫本あとがきを読むと
安田浩一氏は差別される被害者
つまり、在日コリアンの被害が大きいと感じている

在特会が行動する理由が「うまくいってない」ことだとしても
それによって差別と被害が拡大しているのはまぎれもなく事実である

さらに「在日特権」という陰謀論も
修正されずネットに残ったままで
それをいまだに信じたり、さらなるデマや陰謀論につながっていくかもしれないので
被害というのは修復されないままである

・第二次安倍政権は世界の極右台頭を先取りしている?

本書は10年くらい前の本なのに「既存のメディアは本当のことを報道しない」とか
現在のオールドメディア批判と同じようなことを発信している

そして、2012年に民主党政権が倒れ第二次安倍政権が始まったことで
日本は現在のトランプ現象、極右台頭を先取りしているように感じた

日本では2010年代は反左翼、反リベラルが
最高潮だったように思う
リベラルはジェンダー平等、外国人、LGBTQなどのマイノリティを重視しているので
彼らが政権をとっても自分たちの生活がよくなるという期待が持てなかった
(当然ながら、ジェンダー平等などは大切なことで否定しない)

リベラル側は財政規律を重視していたので
優先されるのはマイノリティであり
普通の日本人は不遇なまま放置されるというイメージが固定化していた

そのときに強くなるのはナショナリズムなのかもしれない
さらに、安倍政権はアベノミクスという経済対策を打ち出した

しかし、安倍政権では実質賃金が右肩下がりなので
期待した効果はなかった
それどころか、消費税増税により所得は下がっていて
安倍政権で日本人は貧しくなった

それでもアベノミクスのメッキが剥がれなかったのは
株高と失業率低下(少子化による人手不足)によるものと考えられる
そして、反左翼(悪夢の民主党など)という態度をとることで
延命していたと考えられる

そして、現在
物価高により、コメすらまともに買うことができなくなったり
トランプ関税によりさらに苦しくなっている

もし日本が世界の極右台頭を先取りしているなら
これに対して日本はどうなるかということを見ていかないといけないと思う
さらに自民党がなんらかの形で延命するのか
リベラル側が政権を取りもどすのか
それとも、さらに極右な政党が台頭するのか?

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